学会員の慢性看護活動の紹介 ~ 阪上佳誉子さん

 

プロフィール

阪上佳誉子(さかがみ かよこ)さん

医療法人錦秀会 インフュージョンクリニック 看護部課長 日本リウマチ財団登録リウマチケア看護師

共に働く仲間との貴重な出会いが今の自分を作っている

中学生の頃から看護師になりたいと思い、最初は病院に勤務しましたが、結婚後、子育てをしながら訪問看護ステーションでも勤務してきました。色々な場でキャリアを積み上げてきましたが、常にこのままでいいのかという思いを持ち続け、もう少し医療に携わりたいと思い、再度病院に就職しました。年間一日に400~600 人位のIBD(炎症性腸疾患)・リウマチ患者さんが外来で生物学的製剤を点滴静脈注射されており、チームを作り連携していったことが現在のインフュージョン(点滴)治療チームを結成した始まりとなりました。基準やマニュアルを作り、看護師だけが患者情報や治療について共有しても上手く治療が回らず、危険が残ることがあり、医師や薬剤師、事務とも連携していくことで安全性の高い治療環境が提供できることも分かりました。国内で最も生物学的製剤の症例を多く診ていた現在の院長が開業されて13年目を迎えますが、立ち上げから関わることができたことがラッキーだったと思っています。

訪問看護との出会いが返って医療をもっと深く学びたいきっかけになった

結婚後、子育てをしながら働けるための職場として訪問看護の道を選びました。1999年から2000年当時の訪問看護ではターミナル期にある方や重症の状態にある患者さんを担当することはまだなく、以前は患者さんの状況の中にもっと深く入り込む感覚だったと物足りなさを感じ、医療が中心の場にまた戻ろうと思いました。総合病院勤務後、生物学的製剤で治療をされるリウマチ、IBDの患者さんの看護に携わってきましたが、生物学的製剤を点滴治療するようになって入院をする患者さんはほとんどなくなりました。5年、10年を見据えた治療がされており、生物学的製剤での治療をすることで、患者さんの生活環境やQOLは随分変わり、関西だけでなく、関東などからも治療を受けに来られる方もおられます。今まで食事制限しかできず暗い表情をして来た患者さんが診療を終えて帰るときには、全身が軽快でスキップでもしそうなくらい明るい表情をして帰られる方も多くいらっしゃいます。日本ではインフュージョンという言葉はまだ一般化していないですが、10数年前に先を見越してこのクリニックができました。アメリカに研修に行かせていただいたときに現在行っている治療そして看護ケアは決してアメリカにも劣っていないと実感できました。どの経験もとても貴重なものだったと思っています。

禁煙外来で指導した結果を発表したことが研究との出会い

前病院では、禁煙外来の開設に従事しました。禁煙外来では看護業務の他に実践のデータを蓄積し、初めて論文にするという経験をしました。現在も院長から指導を得ながら研究発表をしたりしていますが、大学教員と出会い、看護の研究から生活者として捉えることの大切さを学び、データの見え方が変わるとともに、患者さんの生活の中で改善できる事は何かを傾聴することでケアも変化してきました。

生活者としての患者さんのセルフケアを支えていきたい

IBDの患者さんは若くて元気な方が多いです。若い患者さんにはライフイベントによりストレスがかかり、症状が悪化することがありますので、難病のことをどう伝えるかも大切になりますし、合併症が生じないように先を見越していくことも大切になります。また、自分で振り返ることが大切ですが、若い男性はなかなか話されないこともあり、カウンセラーからノウハウを教えてもらい、患者さんに語ってもらい傾聴を心がけるようにしています。コロナ禍以前は横浜、九州、沖縄など全国から通院されていました。治療が終わったら仕事や高校や大学などに通い、治療を継続できることが自信になり、治療を受けることだけは誰にも負けたくないと思って治療をされている方もおられるので、治療する環境は待ち時間がない予約枠を考慮しています。また、医療にかかっている患者さんを私たち看護師は生活者として捉え、作成・更新している体調確認シートで患者さんが自分のことを確認しながらセルフケアにつながるよう記載できるようにしています。今後の課題は1カ月から2カ月に1回程度会う患者さんのケアに対してチームでアセスメント力をつけ、記録を充実させ、看護の実践力を上げていくこととです。

阪上さんのIBDを中心とした治療を支援する慢性看護のあゆみは今後もさらに続いていきます。


一覧へ戻る

【事務局】
〒150-0012 東京都渋谷区広尾4-1-3
日本赤十字看護大学内 日本慢性看護学会事務局
FAX:03-3409-0589
ページトップへ▲