変動の社会にあって、慢性状態に関わる健康問題は、ますます複雑さを増しております。人々の暮らしは、物質の豊かさ、情報の豊かさと共にさまざまな犠牲のもとに成り立っているということも言えます。ITの発達は、情報量を莫大に増加させ、人々のコミュニケーションの形態を変え、家族の形態を変え、社会の形態を変え、新たなネットワーク社会を創出してきております。それらの社会と人々の暮らしの変化は、人の心身の健康問題に待ったが効かないスピードで影響を現してきております。
看護学の中で慢性看護は、成人看護学、精神看護学、地域看護学、老人看護学などのあらゆる領域で、教育・研究が取り組まれてきました。平成3年には看護学教育を行っている4年制大学は11校でしたが、平成18年には145校となっております。また、看護学の修士課程は87校、博士課程は37校となりました。教育・研究機関の慢性看護研究者、臨床の高度看護実践家(成人看護(慢性)専門看護師・糖尿病看護認定看護師など)、医療・保健機関の看護管理者、健康増進・疾病予防の看護の政策・行政官などが集まり、いままでバラバラだった慢性状態に関わる看護の知を体系化していく必要があります。そこで期待できるものには、慢性看護研究のメソドロジーの洗練・開発、慢性看護の構成概念及び実践知の抽出、慢性に関連する保健・医療・福祉の連携において病院と地域のネットワークの創出、外来システムの構築、慢性看護ケアシステムに関する政策提言、慢性看護研究者の支援及び連携、関連学会との連携などをあげることができます。
アカデミズムにこだわらず、健康の増進、慢性疾患(生活習慣病など)の予防、慢性的な心身の不調と共に生きる人々と社会に貢献できる慢性看護の実践知の創出と提供システムの構築を指向してゆく必要があります。変革期に即応した社会貢献を果たしていくため、学会としての活動目標を設定し、社会に対して発言できる学会を設立することが急務と考え、ここに学会設立を提言するものです。学会設立の趣旨にご賛同いただき、ご助力いただけますようお願い申し上げます。
本学会は、慢性看護の知の体系化、慢性看護の研究者の交流を支援するとともに、慢性看護提供システムに関する政策提言を行うことを目的としたいと考えております。また、これらの目的を達成するための事業として、「学術集会の開催」「学会誌の発行」「慢性看護の研究者の交流」「国内または海外の慢性看護関連の学会・研究機関等との連携」「制度・政策の検討」「その他本会の目的達成に必要な事業」を考えております。
数間 恵子 | 東京大学医学部大学院医学系研究科教授 |
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河口 てる子 | 日本赤十字看護大学看護学部看護学科教授 |
川村 佐和子 | 青森県立保健大学健康科学部看護学科研究科長 |
土居 洋子 | 大阪府立大学看護学部看護学科教授 |
野川 道子 | 北海道医療大学看護福祉学部看護学科看護学科長 |
野並 葉子 | 兵庫県立大学看護学部看護学科教授 |
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