学会員の慢性看護活動の紹介 ~ 永瀬昌子さん

 

プロフィール

永瀬昌子(ながせまさこ)さん

地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 副看護師長

病気を持って何年も過ごしている人の体験を聴くことの大切さを知った

永瀬さんは、呼吸器内科、循環器内科、アレルギー病棟等で30年間看護を実践しておられます。
アレルギー病棟で勤務しているとき、それまでは内臓疾患の高齢、あるいは中年以上の方と関わることが多く、若くてあまり話さない方とどう接するかが分からないまま日々看護をしていました。ある日、軟膏を塗布する処置室で専門看護師が患者さんと喋っている様子をカーテン越しに聞き、私とは目も合わせない患者さんがその専門看護師とはいっぱい喋っている状況に驚きました。自分は頑張っても社交辞令の天気の話だけで、ただ軟膏を塗っているだけと思いました。何もできない自分が悔しく、患者さんと専門看護師の話をずっと聞いていました。興味があったので、その専門看護師にどうしてそんなに話を聴くことができるの、何が違うのかと聞きました。今では、重症の方からも話を聴けるようになりましたが、今まで患者さんがこの病気を持って何年も過ごしておられるということを理解することの大切さを知るともに、患者さんに起こっている経験や出来事から私が知らない世界を教えてもらっています。

患者さんの皮膚に触れ、抱えているしんどさの話を聴けるようになった

最初は皆さん身体も気持ちもガチガチなので表情も読み取れませんでしたが、患者さんに「どうしたん?」って患者さんがしんどかったこととかを聴けるようになりました。でも声をかけられるようになるには3年ぐらいはかかりました。案外患者さんは今まで聞かれたことがなかったことに看護師が入っていっても嫌がらないということが分かってきました。家でどうやっているのか聞いていくと、自然と患者さんの方から喋ってくれるようになりました。自分で包帯を巻いたり、お風呂に入るのさえ大変な人もいっぱいいます。何を思っておられるのだろう、どうしたいと思っておられるのだろうと、聞いていくようにしています。軟膏を全身に塗った後に患者さんから「過去一番です」って言われたときはとても嬉しかったです。その方は、「髪の毛だけは自慢なんです」っていう髪の毛が長く、髪の毛がとても綺麗な方でした。髪の毛は大事にされていましたが、頭皮はボロボロになっていることが頭皮を触ることでわかります。その人が大切にしていることを感じ取りながら、丁寧に軟膏を塗っています。

患者さんが余裕をもてるように関わる

軟膏の量と塗り具合で皮膚が治癒するという感覚は患者さん自身分かります。入院してしっかりと薬を外用することによって確実に皮膚や身体の状態が良くなっていくので、良くなった時に一緒に喜んでいます。また、アトピー性皮膚炎などのアレルギーの患者さんは医療者の前で構えてしまい、ガチガチになっている人が多いです。生活の中でここまでやってもいいよ、考え方を広げてもいいよっていう遊びや余裕の部分を少し作ってもいいのでは、といったお話をすることが大事だと思っています。

曖昧さを楽しむ

病気のことを教えようと看護師が思っていても、アトピー性皮膚炎の患者さんからすると、もう知っている話が多い。看護師って正しくあるべき、正しい行いをしようというところから抜け出せないところがあります。私たちの新人時代はやって失敗したら先輩が何とか取り繕ってくれるけれど、今はどうしても自己責任とか、書類系を書かなければならないことが多くなってしまっていて、失敗したりトラブルになったりすることを避けるというか、考えすぎてしまっていて、「しゃーないやん」っていうところがない。教えられたことを真面目に伝えるとか、医師の指示がこうだからだけでなく、決まったことの周辺の曖昧さみたいなところを楽しめばいいのにと思ってます。曖昧さを楽しんだら面白いけれど、同じだけ、同じ以上に辛いこともあり、腹立たしく落ち込んだりもしますが、楽しむことをしたら面白いのにと思って、日々看護をしています。

原因がはっきり分からない病いを生きる人への看護の探究

現在関心を持っているのは免疫疾患の方です。アレルギーでも生物学的製剤を使うことが増えてきて、外来治療が主ですが、経済的な問題や患者さんの効果の感じ方、継続治療できるかどうか、先の見通しをどう考えるかについては、とても気になります。勉強して時代に応じていかなければならないと思っています。人によって薬の効果の感じ方が違うし、その人が治ると思っているところに到達しなかったときのフォローなどが必要だと思っています。原因がはっきり分からない中を生きなければならないので、どう患者さんの大変さを理解していったらいいのかは私の今後の課題です。

永瀬さんの看護実践は、今後も看護を楽しむこととして続いていきます。


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