学会員の慢性看護活動の紹介 ~ 髙橋 加代子さん

 

プロフィール

髙橋 加代子(たかはし かよこ)さん

医療法人惇慧会外旭川病院 
看護部長 緩和ケア認定看護師

外来緩和ケアチームの一員として楽しくやりがいを感じながら実践している

地域看護や訪問看護に興味があり、看護専門学校卒業後に進学して保健師の免許を取得しました。看護師として外科系に7年間勤務する中で、がん患者さんとの出会いがあり、緩和ケア認定看護師となり、ホスピス病棟の勤務を経て、現在看護部長をしております。
当院は療養病床、ホスピスを有しています。療養病棟では、人工呼吸器を装着されているなど、比較的重症である患者さんを受け入れています。ホスピス緩和ケア病棟は、1998年に秋田県内で唯一のホスピス病床として開設され、現在東北6県では最も多い病床数となっています。がん終末期の症状緩和、ご家族へのケアを大切にしながらチーム医療を実践しています。
現在、管理職ではありますが、外来緩和ケアチームに所属してホスピス外来を担当することもあります。ホスピス外来は、他院から紹介を受けて、まだ在宅で大丈夫、ぎりぎりまでがんばりたい、というようながん患者さんをフォローしています。ほぼ9割はホスピス緩和ケア病棟で看取りを行っていますが、自宅で過ごされる場合は、ホスピス外来で診ています。現場が好きで、地域とのつながりを大切にしながら、スタッフと一緒に楽しくやりがいを感じながら実践しています。また、院内研修の担当、秋田市内のがん看護に関わる研修など、認定看護師の仲間と一緒に携わっています。

ホスピスマインドは看護の原点

当院は看護と介護の協働でのケアを行うことを大きな特徴としております。患者さんの9割が日常生活は全介助で、発語やコミュニケーションが難しいため、観察力が問われます。介護士は患者さんをとてもよく観察しています。「患者さんの力の入れ具合がいつもと違う」「眉間のしわがどうだ」など、微細な違いをキャッチして「だからどこか痛いんでなかろうか」と発信してくれます。看護と介護で得た情報をカンファレンスで共有しながら「この人にどうしていく?」と一緒に検討してケア計画を立てています。
日常生活やコミュニケーションが困難な患者さんへの看護として大事にしていることは2つあります。1つ目は、ホスピスマインドを持って、その人の生き方を最後まで支えることです。その方の思いや価値観を尊重して、生き方を可能な範囲で支持するとともに、ご家族へのケアも大切にしています。このホスピスマインドは、患者さんが病院、在宅、施設のどこで療養していても、とても大切な関わりであると思っています。また、コミュニケーションもままならず、本人の意思や価値観を知ることがとても難しい状況にある患者さんだからこそ、倫理観をとても大切にしています。患者さんの反応がなくても声をかけ、説明しながらケアする、日々繰り返されるケア、例えば保清とか排泄援助など日常生活を丁寧に関わることそのものが相手を尊重したケアに繋がっていると思います。そして、個人の価値観は最初は分からないので、ご家族とのコミュニケーションを大事にし「お父さんだったらどんなお考えをされるでしょうね?」というように、ご家族と一緒に考えていく姿勢を大切にしています。
2つ目は、寝たきりや全介助であっても、その方の持っている力を引き出す、支えるケアを大事にしていきたいということです。そのためには、リハビリや多職種との連携、チーム医療がとても重要だと思っています。例えば年間2-3例ですが、「絶対無理でしょう!?」と思う患者さんが嚥下訓練を通して経口摂取が可能になったというケースを経験しました。その可能性を見出す、変化を見逃さないという関わりで、その人の力を引き出すケアを看護と介護で力を合わせてやっていきたいと思っています。

スタッフとの関係性を築きながら、より良い看護について考えていく力を育成する

慢性病者への大事な看護の心を伝えるために、まずは看護師長さんたちとよく語っています。「私はこう思うけど、どう?」というように、会話する時間を大切にしています。看護師長さんから、病棟で起きた「これってどうなんだろう?」と思った事例や気になって悶々としている事例を出してもらって、ミニ検討会をしながら倫理観を育んでいます。また、病棟の倫理カンファレンスやデスケースカンファレンスに可能な範囲で参加して「うまくできているね」とフォローしながら、少しでもホスピスマインドを伝えられたらと考えています。
普段から病棟ラウンドをよくするようにしています。当院にはコミュニケーションのとれる患者さんが20名くらいしかおられませんので、朝食時にラウンドして患者さん全員にお声かけをしています。ラウンド中にはスタッフから「あっそうそう、これで困っているのよ」と、気軽に声をかけてくださることもあります。現場の状況を知るためにも、今後も病棟に足を運べたら良いなと思っています。
今後は「なんで?どうして?」と疑問を持ちながら、考える力を持った看護師と介護士の育成をしていきたいと思っています。チーム医療の中での看護と介護の役割、専門職としての視点の違いをお互いに理解して協働していくためには「考える力」が必要です。そこで看護方式の工夫や改善にも取り組み、評価を実施して、その成果を示していきたいです。

高橋さんのホスピスマインドを伝える実践はこれからも続きます。


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