秋田 馨(あきた かおり)さん
独立行政法人国立病院機構 東京病院
副看護師長 慢性疾患看護専門看護師/慢性呼吸器疾患看護認定看護師
看護学校を卒業後、現在の病院に就職して最初に配属されたのは呼吸器内科病棟でした。そこで6年間働くうちに、緩和ケアに関心を持ったのですが、急性期を経験した方が良いと先輩方に勧められてICUに異動になりました。急性期看護を実践する中で、あらためて慢性看護の楽しさに気が付きました。
当院は診断~治療、終末期まで診る病院なので、患者さんとの関りが長くなり、病気のことや酸素療法のこと、看護師に求めることなど色々教えていただいて、私は患者さんに育てていただいたように感じています。看取りを経験することも多く、看護師にしか作れない大事な場面でも学ばせていただきました。
手術室や結核病棟を経て、また呼吸器内科病棟に配属されました。当院は呼吸器専門病院といわれているので、看護師が呼吸器専門の看護を実践していると胸を張って言える体制を作りたいと思い、慢性呼吸器疾患看護認定看護師になりました。病棟をベースに活動しながら、在宅酸素療法患者を対象とした看護外来や呼吸サポートチームとしての病棟支援や教育体制の整備、呼吸器疾患看護の研修を実施してきました。看護師が技術的な知識を身に付けることはできてきましたが、まだ呼吸器疾患の「看護」を広めていく必要があると思っています。
呼吸器疾患の患者さんは高齢の方が多く、認知機能の低下や身体状態が変化しやすい特徴もあります。安全面を考慮してマスク式の人工呼吸器を装着しているときは外すことができないような環境になることがありました。そのような状況を変えたいと思い、医師に働きかけて、マスク式人工呼吸器を外すことができる標準指示を出してもらうようにしてから、看護師は抵抗感なく処置や患者の都合に合わせてマスクを外す時間を設けることができていきました。また、在宅酸素や専門的な治療薬を導入する際は、まずは患者さんの思いを確認してほしいと看護スタッフに伝えています。観察とアセスメントが大切で、治療だけして終わりではなく、患者さんの身体状態の観察を踏まえて生活状況への影響を考えた看護ができるようにしたいと思っています。
看護外来では在宅酸素療法やCPAP療法(持続陽圧呼吸療法)などの支援や肺非結核性抗酸菌症(NTM)などの病気への不安が強い方を対象に療養指導を行っています。指導というよりは、患者さんのお話を聴くだけで終わる時もあります。患者さんは「ここに来て話ができて助かる!」と言ってくださいます。患者さんのお話を聴き、その方がどんな病気の体験をしておられるのかを知ることが大切だと考えます。正しい知識を患者さんに伝えて説得するのではなく、その方の体験や状況に合わせて支援する、そのような看護を広めていきたいです。
2025年12月に慢性疾患看護専門看護師の認定を受けました。専門看護師になったきっかけは、非がんの呼吸器疾患患者の倫理調整をしたいと思ったからです。治療早期から患者さんの支援を実施していきたいと思います。
第19回日本慢性看護学会学術集会では、NTMと共に生きる人の体験を報告しました。研究前は、NTM患者さんは薬に対する意識が高く、簡単には納得されないという勝手な印象を持っていましたが、患者さんのお話を聴いて「なるほどなあ」と思うことが沢山ありました。見えない菌と戦っている人たちは、繊細にならざるを得ないのだと思いました。看護師も医師も、私が研究する前と同じ感覚を持っているので身体状態や治療に過敏にならざるを得ない患者さんの経緯を伝えていきたいと思います。
これからは、非がんの呼吸器疾患患者の倫理的課題にチームで取り組めるようにすること、患者の継続的フォロー体制を作るために看護外来実践の仲間を増やすこと、NTM患者だけでなく肺アスペルギルス症患者の研究にも取り組み、慢性看護を広めていきたいと考えています。
患者さんから学び成長していく秋田さんの活躍は、これからますます輝きます!